イギリスがこのCOVID-19パンデミックによるロックダウンに入って1年と1ヶ月ほどが経ちました。ずいぶんと長いようでもあり、短いようにも感じる変な期間だったと思います。
今回はこの1年と1ヶ月を振り返ってみたいと思います。
突然の自己隔離
去年の1月は半ばに一時帰国から帰ってきて、2月末から博士課程の4年目に差し掛かる直前ということもあり、若干の緊張感をもちながらオフィスに通い始めたのを覚えています。この段階では『武漢で新型コロナウイルスが発見された』という域を出ていなかったと思います。[1]2020年1月のBBCニュースの記事:https://www.bbc.com/japanese/51144971 この段階では武漢の外での流行はしていない、というような扱いだったように感じます。一方でこのニュースを見ながら「外で流行はしていなくても感染者が武漢の外に出てないわけではないだろうなあ」とぼんやりと考えていた気がします。
2月に入ると学部生の授業が始まるので、冬休み帰っていた学生がちょうどその頃に戻ってきたりします。留学生も少なくない大学なので、このあたりから若干個人的には警戒していたので消毒用アルコールジェルを買って設置したり、小さいボトルも持ち運ぶようになりました。この段階ではまだ手洗いを念入りに、という呼びかけすらまだだった気がします。実際学生が帰国してきても特にCOVID-19患者が大量にでた、というような話はその時期はほとんど聞かなかったように思います。
スコットランドで状況が変わったと感じたのは3月の終わりに差し掛かった頃でしょうか。3月頭に僕はアバディーンで、スコーン(SCONE)というスコットランドのネットワーク研究会の集まりに顔をだしていました。(まさかこれがこの街を出る最後の機会になるとは露知らず)このときはそろそろ手洗いを念入りにというメッセージが政府からも呼びかけられていた頃です。このあたりから大学も手指消毒用壁掛けアルコールジェルの設置をしだしました。(イギリスでは日本と違い、比較的大きな施設の出入り口に消毒用の設備があるところは当時ほぼなかったとおもいます)しかし、そこから程なくいよいよ症例があちこちで確認されるようになりました。自分の周りでもハウスメイトが週末に会った人がそれっぽい症状になり、念のため世帯全体で自宅隔離を開始。そしてその1週間か2週間後には大学もリモートに切り替わり、そして国全体がロックダウンに入りました。大学がロックダウンに入り閉まる直前、オフィスからキーボードや本、研究用のラップトップなどを慌てて持ち帰りました。そしてそこから、制限の程度は変わりつつも、今も続く行動制限が始まりました。
時間と空間の感覚
こうして突然オフィスへも入れなくなり、サーバールームにもいけなくなり、自宅から極力出ない生活がはじまりました。最初はオフィスへ行き来する時間がなくなり、自宅作業は慣れれば良い気もしました。朝ごはんもオフィスに行っていた頃より慌てずに食べれるような気がしましたし、節約にもなった気がします。しかしやっぱり長くなるにつれ、時間と空間の感覚が若干おかしくなってきた気がします。
本当にこの街を一切出ていないのがまず1つ。これはかなり感覚が変になります。普段もそんな出かける方ではないにしろ、一年以上出なかったのは初めてです。
オフィスに通わなくなって、寝室とキッチンで一日が完結する日もあるので、これもあまり続くとちょっとヘンになります。週に一度、できれば数回は家の外に出かけないといけないと思います。
そしてなによりも時間の感覚が一番ヘンな気がします。一年経ってみて、本当に長かったような、同時に短かったような、たくさんのことが起きたようで、あまりにもなにも起きていない感じもします。本当におかしな気持ちです。多分この対立する2つの感覚を同時に感じているのは「普段しなかったことをして、普段当たり前のことができない」ことが同時に起こっているからだと思います。ある一つの病気の感染者数を見ていろいろ考えることなんて僕は経験をしたことがありませんでした。そして家で自炊する機会も普段より格段と増えました。その一方、普段なら人をご飯に誘ったり気軽にしていたし、オフィスへの行き来は日常の一部でしたが、全くできなくなったまま一年が経ちました。こうして変化があることで忙しいと思ったりいろいろな出来事があったと感じる一方、普段当たり前のようにしていたことがなくなり、今度はなにもないように感じたりしているんだと思います。
自炊レパートリーを増やす
読者の中には聞き飽きた方もいるかもしれませんが、本当にこの一年はある意味自炊の一年でした。今まで作ったことのないものをいろいろと作れるようになったりしました。料理をする感覚というか勘も前より働くようになった気がします。分量や、レシピにはっきり書かれていない部分の解釈など。
もう少し具体的に言うと、この一年では
- 揚げ物
- フライドポテト
- 唐揚げ
- とんかつ
- 天ぷら
- 蒸し調理
- 広東風蒸し魚
- 広東風ミルクプリン
- 炊き込みご飯
- オーブンロースト・グリル調理
- オムレツ・オムライス
など、いろいろと作ったことのないものや、やったことのない調理法に挑戦できました。
この先の見通し
ずいぶんと長くなった気がしますが、ちょっとこれからどうなるのか考えてみたいと思います。
まず、スコットランドではワクチン接種がかなり進んでいます。合わせて感染者数や、死者数もかなり減っています。この夏頃かその終わり頃には20代後半の僕にも回ってくるのでは?という感じです。おそらく接種率が100%に近くなった辺りで国境の制限がゆるくなるのではないかと予測しています。現在は1750ポンドもかかる10日間のホテル隔離措置が実質の入国停止措置に近いものとして働いていると思われます[2]https://www.gov.scot/publications/foi-202100156898/ にどのようなサービスがその値段で提供されるのか書かれていて面白いです。[3]イングランドから入国しても、最終目的地を偽らない限りは求められ、おそらく何らかの方法でトラッキングされると思います。
もうちょっと個人的なことに関していえば、まずは博論を書き上げねばなりません。8月の終わりには一度提出をすることとなりそうです。今は全力で実験の準備、データの収集、処理をしつつ、博論執筆を頑張らねばなりません。同時に、最後の課題の採点も頑張らないといけません。博論の提出後は、指導教官が研究助手として三ヶ月ほどパートタイムで雇ってくれる、という話があるのでTAのバイトをしつつ、研究助手としての仕事をしながら、口頭試問の準備、そして就職活動を頑張らねばなりません。
そして就職活動といえば、博士号取得後ですが、今のところはイギリスに残るつもりでいます。今年7月から、卒業生向けの就労ビザのプログラムが始まります。それなりにお金を積まねばなりませんが、3年間比較的自由に仕事をしつつ、イギリスに残ることができるので、一旦その方向で考えています。仕事も特にこれと決めてはおらず、ポスドク、企業、関係なく考えていますが、一度だけでもポスドクはやっておいたほうが良い気もしています。
注釈
↑1 | 2020年1月のBBCニュースの記事:https://www.bbc.com/japanese/51144971 |
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↑2 | https://www.gov.scot/publications/foi-202100156898/ にどのようなサービスがその値段で提供されるのか書かれていて面白いです。 |
↑3 | イングランドから入国しても、最終目的地を偽らない限りは求められ、おそらく何らかの方法でトラッキングされると思います |